キャリアストーリー

【CA’s PRECIOUS STORY】株式会社ヒューマンブリス山田真紀さま

 


第二回目となりました『CA’s PRECIOUS STORY』

今回は、研修講師で、2019年9月に二冊目のご著書『人生をシンプルにする本』をご出版された株式会社ヒューマンブリス代表の山田真紀さんにお話を伺います。

ANAのOGとして、ANAビジネスソリューション株式会社で「接遇&マナー」の講師もされていらっしゃいます。

現役時代は、ANAが舞台の映画『ハッピーフライト』で、冒頭シーンに出演するCA役で抜擢されるなど、美しさと知性で今も輝く素敵な女性です。


*経験エアライン ANA 全日本空輸株式会社
*エアライン勤務 16年(国内線8年・国際線8年)
*担当役職    国内線国際線チーフパーサー・チームコーディネーター
*入社      新卒 1996年入社
*現在のキャリア 研修講師

 

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実は山田真紀さんは、私がANACA時代同じ所属課でフライトした仲なんです。
いつも先輩後輩に慕われていた真紀さんが大変印象的でした。

そんなご縁もあり、今回ぜひお話を伺いたいと思ってお願いしました。

真紀さんといえば、映画『ハッピーフライト』冒頭のANA客室乗務員役で、
そのお姿を目にされた方も多いのではないでしょうか?

機内で流れる非常用設備を案内している、あの客室乗務員です。
(もしよかったら、是非もう一度その映画をご覧ください)


Q『ハッピーフライト』でANAのイメージ客室乗務員として出演された経緯は?

大変光栄なお話で・・・。
実は自分から出たいと言ったわけではなくて、マネージャーからの依頼だったんです。

その時30代だった私よりも、「もっと若くてイメージに合うCAがいるのでは?」とお伝えしたのですが、出演はそのまま決まりました。
出演後も、自らその話をすることはなくて、むしろ聞かれることに恐縮してしまうというか・・・。

淡々とフライトしていましたね。

そんな感じで、そのような華やかな世界に興味がなかったことが起用のポイントだったのかもしれません。


QどうしてCAになりたいと思ったのですか?

小さな頃に「スチュワーデスになりたい」って思いました。
スチュワーデス物語を見たのを鮮明に覚えていて、「あんなドジな人でもなれるんだ」と思ったんです。(笑)

消化器からミールサービス、英会話まで、様々なことができるスペシャリストな仕事だと感じて・・。

その頃の私は、自分に自信がなかったので、その姿にとても憧れました。


Q CAになるために努力されたことはありますか?

小学生5年生から、英会話教室に通わせてもらって、高校は英語科に進みました。英語は好きではなかったですが、CAになるために必要だと思って頑張りました。

あと、CAといえば身長。

幼い頃、家にあった『ぶら下がり健康器』に毎日のようにぶら下がってました。効果があったのか、今は170cmです。中学時代にかなり伸びました。

高校の時はCAになりたいという思いが明確だったので、髪はひっつめ黒髪で振る舞いに人一倍気をつけていました。みんなに「CAになる」って宣言もしていましたね。周りも巻き込んで頑張るっていうスタイルです。

学生生活では、制服のスカートを短くしちゃいけないって思っているほど真面目でした。CAって『清く正しく頭もいい』と思っていて、私もそうならなきゃって思ってたんです。
そんな中、友人たちに「CAぽいね」って言われるととっても嬉しかったです。

そのあと、航空会社に縁のある(就職率が高い)短大を選んでエアライン受験しました。




Q CA受験はいかがでしたか?

第一希望はずっとJALだったんです。
『スチュワーデス物語』の舞台がJALだったのをきっかけに、その当時国際線路線が多かったJALで、世界中を飛んでみたいと思っていました。

でも実は、JALの面接を辞退してしまったんです。

雰囲気がハイキャリアすぎて私には近寄り難く感じられて、二次選考の時に「なんか違う」って直感で思ってしまって最終選考には行かなかったんです。

ANAの選考では、CAの皆さんが緊張をほぐしてくれました。「なんてあったかい会社なんだろう」と思いました。
会場では、その当時話題だったマリンジャンボの動画が流れていて、一般公募で小学生の書いたデザインが採用されたストーリーにジーンときてしまったんですよね。次の選考に呼ばれなくてもANAを嫌いにならない!って思いました。

内定した時は何が起きたか分からないという感じで、大喜びでした。



Q いよいよ晴れてANAのCAに。CA生活はいかがでしたか?

96年3月に入社してから16年、全てが楽しかったです。

一番は、そこで出会えた『人』が素晴らしい人ばかりだったこと。

所属している班もみんな温かな人たちばかりでしたし、パターン(所属している班がいくつか集まったグループで、勤務日が同じとなる)で、良く知っている方と飛べるのが面白く楽しかったです。

実際に入ってみて、イメージは変わらなかったですね。

働けていることに『嬉しいしかない』という気持ちでフライトしていました。
嬉しいって思うのは・・・仲がいい同期と飛んでも、仕事となると互いにプロとして働く関係が心地よくて、いつも達成感を感じていたからなんです。
仕事は仕事という線引きがあることが、私には合っていました。


Q  性格にCAの仕事がフィットしていたんですね?

いえ、もともとは全然CAらしい性格ではないんです。
引っ込み思案だったし、大勢でワイワイすることに馴染めないタイプで。

でも、仕事で求められるんですよね。
チーフパーサーの役割では、自分から色々働きかけないとって鍛えられたんです。今思えば、その経験を通して自分の成長を感じられていたことが、面白いと感じていたと思います。


Q  苦手な人と一緒にフライトしている時は、どうされていたんですか?

ある時、ステイ先で「ひどいこと言われちゃって悔しい」ってお話していたら、「苦手な人は作っちゃダメだよ」って先輩がアドバイスしてくださって、それからその言葉がいつも胸にありました。
いつでもどなたにでも、分け隔てなくお付き合いされていた素敵な先輩からの言葉は、心にグッと刺さりました。

苦手意識を持たないでフラットにお付き合いしていくうちに、段々平気になっていきました。


Q CAのやりがいって何だと思いますか?

『チームマネージメント』ですね。チームワークは、みんなにやる気を出してもらわなければならないと思います。私の役割として、『いかにみんなが仕事しやすいようにするか』をいつも考えていました。

最初の顔合わせで全体の雰囲気から察するということをしていました。
最初に笑顔を向ける時に、100%の笑顔を向けるだけがいいわけではないと思っています。
モチベーションが下がってる相手に対して、最初から元気に挨拶してしまうと、多分相手は引いてしまうと思うんです。そんな時は、トーンを抑えてから始めた方が話を聞いてくれるかなって思ってます。

信頼しあえる関係でいるために、徐々にお互いの心の温度を上げていくってことです。

会社に長く勤めていると、物をなかなか言ってもらえないようになりますよね。なんでも言ってもらえるために、かけ離れた存在にならない方がいいって思います。

「怖い人だよ」と噂されていたらしいんですよ。でも実際会ってみたら、「なんだ、こんなに面白い人なの?」なんて言われて・・・(笑)。

相手に寄り添ってトーンを合わせるって大事で、やればやるほどいいチームになります。それが楽しくやりがいがありましたね。

「頑張ってる?」「いい笑顔だね」って声をかけるだけでも、人は笑顔になったり仕事ぶりが変わっていきました。どういう関わり方をしたら良いチームが作れるのか必死でした。

感覚で仕事ができる器用なタイプじゃなかったかもしれません。
いつも「こーしなきゃあーしなきゃ」って考えてました。

 

Q CAで大変だったことは何ですか?

事前準備が大変でした。国際線のメニューやお酒の種類、国ごとに違う税関・検疫対応を覚えるなど、勉強量がとっても多くて毎回フライト前が大変で・・。

成田までの電車内で、フライト知識を覚えながら、耳では英語のヒヤリングの同時進行。そこまで時間がなかったんです!
『CNN STUDENT NEWS』など聞いていました。

オフの日もやっていたんですけど、パーサーの時はサービスプランなど考えているとあっという間に時間がなくなり、いつもプレッシャーでした。

フライトでは、着陸前にミールのトレイを回収できなかったことがありましたね。東南アジアの路線で、雷が多く揺れが続いてたんです。

ベルト着用サインが点いたり消えたりしていました。あと数列でミールトレーが全て回収できる、というところでは飛行機は最終の着陸態勢。

床にトレーを置いていただいて、エプロン姿のまま、クルーみんなに「座ってー」って声かけて、ギリギリの着陸でした。チーフパーサーではなかったんですが、通路を歩いている時の地上の近さに、変な汗をかいたのを覚えています。


Q CAキャリアの中で転機になったことはありますか?

実は、人生が変わったことがありました。

国内線のチーフパーサー資格取得が同期に比べて、私は半年遅れたんです。
「資格要件は満たしているけど、熱意がないから推薦できない」ということでした。同期たちはスムーズにチーフパーサー推薦を受けていたので、最初は「この上司が厳しいから推薦されないんだ」と思っていたんです。

数日間の怒りの後に、同期の成長を目の当たりにするフライトがありました。

彼女は、先輩とうまく関わり、お客様と積極的に会話したりするなど、仕事を自ら楽しんでいたんです。

私はそれまで、万全な知識で淡々と仕事していて『フライト=作業』だと思ってたところがありました。憧れてCAにはなったけど、「これくらいでいい」「標準レベルを保てばいいんだね」って考えていて、お客様との会話は、そういったことが好きな人がやればいいと思ってたんです。


今までの自分の『仕事に対する関わり方』を振り返って、「こういうところか」と気づくことができました。

チーフパーサーの勉強を進めていく中で、責任を持つこと、お客様との関わり方の奥深さに気づき、「こんなにいい仕事だったのに、今まで私は何してたんだろう」と、モノクロの世界からカラーの世界に来たみたいな衝撃でした。

「おもてなし」ってお客様からの評価にすぐつながる訳ではないので、基本業務さえ出来ていれば、フライト自体、淡々とこなしていけるものでもあったりするんですよね。でも実は違うってことが、よく分かりました。

それからは、仕事のディディールまでこだわるようになって、

より良い品質でフライトするため、
みんなが輝いて仕事できるため、
どうしたら良いかと、考えながら仕事に向き合いました。


 

Q 今振り返って、現役時代にしておけば良かったと思うことは?


『世界中に友人を作っておけばよかった』と思います。

様々な場所に行かせていただいて、様々な国の方々と話す機会はあったはずなんですが、ステイ先ではほとんど寝てたんです。

出歩くよりも、仕事が気になってしまって。
落ち着かないので寝てなきゃって思っていました。

ロスステイの時は、24時間位寝てたと思います(笑)。

毎回ホテルの中のスタバでサンドイッチ買って、一歩も出ないって感じ。そんなことしていたら、出会う人が限られてしまいました。もっと違う世界の方々と出会いを楽しめばよかったと心から思います。

 

 

Q CAからのセカンドキャリアはいかがですか?

退職後は、CAでの経験を活かしながら研修講師へ転身。
最初は、CAOGの先輩も多い同業界の方に、遠慮したりしていました。

自分の心より、その場の空気を読んで対応するの日本の客室乗務員。

相手の温度を見すぎて遠慮してしまうのがCAですね。日本のエアラインは『謙虚が美しい』という感覚があると思います。その感覚の中で16年間生きてきて、すっかり身についていました。

ANAの品質はサービス業界トップ。

企業さまからも研修講師として高い品質が求められます。少しずつ信頼を積み重ね、今では大規模な研修を任せていただけるようになりました。

ありがたいことに弊社は現在2期目。
これからもご縁を大切に、心を込めて務めていきたいと思っております。


Q 現役世代にアドバイスするとしたら?



1日1日を大切にして、もっともっと楽しんで欲しいって思います。

今日はパーサーやギャレー担当など、役割無いから・・・って思うこともありますけど、毎便毎便もっと楽しみながらフライトしていかないと勿体無いです。

あっという間に時は過ぎてしまいます。

現役時代の流されるような毎日を、少し立ち止まって見ていただくと、きっと素敵な時間を過ごしているって気づくのではないかなって思います。



Q これからCAになる方もアドバイスをお願いします

前向きにポジティブに進めて欲しいって思います。

思っていることを言葉や行動にきちんと出せる人がいいですよ。
あまり積極性が無い人は向かないんじゃないかなって思います。

あとは、エントリーシートの書き方にすぐ正解を求めないこと

自分の意見を持っていいと思います。
もっと自信を持ってくださいね。是非頑張って欲しいと思います。

応援しています!

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1時間半にわたるインタビュー。

予定よりだいぶ長くなってしまったにもかかわらず、最後まで笑顔で丁寧に答えてくださった真紀さん。話しながらもこちら側のことも気にかけてくださったり、さすが人気講師。心遣いが素晴らしかったです。

インタビューありがとうございました。



【CA’s PRECIOUS THINGS インタビューから分かること・・・・】

CAの仕事は、奥が深いものです。

反面サラッとこなしていけるものでもあり、本人の意識の違いで仕事の楽しさを思い存分感じることができるものだと思います。
そして、『人』との出会いが人生を豊かなものにしてくれます。

様々な世界、様々な人たちとの関わりも、積極的に楽しむことが大切だということですね。

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